三洋ピンボール

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齋藤潤の経済バーズアイ (第139回)

「水準」でみた金融政策、「方向性」で見た金融政策

 

2023/11/08

【分かりにくくなった日本の金融政策】

 最近(jin)の日本の金融政策は非常に分かりにくくなりました。

 2013年4月(yue)に「量的・質的金(jin)融緩和」が導入された時は、金(jin)融政(zheng)策の操(cao)作目標(biao)が金(jin)利からマネタリーベースに変更され、その増加額(e)に目標(biao)が設(she)定されるという、それまでとは異なる非伝統的金(jin)融政(zheng)策でありながら、そのロジックはとても分かり易いものでした。

 しかし、2016年(nian)1月(yue)にマイナス金(jin)利が導入(ru)され、さらに同(tong)年(nian)9月(yue)に長(chang)短金(jin)利操作(イールドカーブ・コントロール)が導入(ru)され、「長(chang)短金(jin)利操作付(fu)き量(liang)的(de)(de)(de)・質的(de)(de)(de)金(jin)融(rong)緩(huan)和」となった時、事(shi)実(shi)上、操作目(mu)標(biao)が長(chang)短の金(jin)利に戻(li)され、マネタリーベースの増加額やそのための長(chang)期国(guo)債等の資産(chan)買入(ru)額は、長(chang)短金(jin)利操作の必要性に応じて決定(ding)されることになりました。つまり、マネタリーベースに特(te)定(ding)の目(mu)標(biao)額が設定(ding)されたり、それを実(shi)現するように長(chang)期国(guo)債等の資産(chan)を買入(ru)れたりすることはなくなり、いわゆる「量(liang)的(de)(de)(de)緩(huan)和」ではなくなったのですが、それにもかかわらず、その枠組みを「量(liang)的(de)(de)(de)・質的(de)(de)(de)金(jin)融(rong)緩(huan)和」とすることで分かりにくくなりました(第1図(tu))。

 また、長短金(jin)利(li)(li)操作を導(dao)入して以降、長期(qi)(qi)金(jin)利(li)(li)の目標(biao)は一貫して「ゼロ%程度」とされてきました。しかし、その変動(dong)幅を徐々に拡大させていったことで、長期(qi)(qi)金(jin)利(li)(li)はゼロ%から乖(guai)離してきたことも、金(jin)融政策を分(fen)かりにくくしました。

 2016年9月(yue)(yue)に長短金利操作(zuo)が導入された際(ji)には、長期(qi)金利の変動(dong)(dong)幅(fu)は概ね±0.1%とされてきましたが、2018年7月(yue)(yue)には「上下にその倍程度変動(dong)(dong)しうる」とされ、2021年3月(yue)(yue)には変動(dong)(dong)幅(fu)を±0.25%程度とすることが明確化された上に、2022年4月(yue)(yue)には10年物国債の指値オペを0.25%の利回(hui)りで実施することが決定されました。

 さらに、2022年12月には変動幅が±0.5%程度に拡大され、指値(zhi)オペも0.5%の利(li)回りで実施することとされました。そして、23年7月には指値(zhi)オペの利(li)回りが1.0%に引き上げられ、10月31日には「長期金利(li)の上限は1.0%を目(mu)途(tu)」とするとし、「指値(zhi)オペの利(li)回りは、金利(li)の情(qing)勢等を踏まえて、適宜決(jue)定(ding)する」とされたのです。

 この結果、長期(qi)金利は徐々に上昇し、足元(yuan)では1%に近づくことになっています。これを「ゼロ%程(cheng)度」の範囲(wei)内(nei)であると言えるのか、疑問が残ります(第2図)。

 そして、最(zui)も分かりにくいのは、以上のような変化を遂げていながら、現(xian)在(zai)の金(jin)(jin)融政策スタンスは「金(jin)(jin)融緩和(he)」であり、今後とも、「粘り強く金(jin)(jin)融緩和(he)を継続する方針である」としている点です。現(xian)在(zai)の金(jin)(jin)融政策は、本当(dang)に「金(jin)(jin)融緩和(he)」と言えるのでしょうか。

【「水準」から見た現在の金融政策】

 日本(ben)銀行が現在の金(jin)融政策スタンスを「金(jin)融緩(huan)(huan)和」という背(bei)景には、金(jin)融緩(huan)(huan)和を「水準」で見(jian)ているということがあるように思います。それは、2023年(nian)11月(yue)1日発表(biao)の最(zui)新の「経(jing)済・物価情勢の展望」(通(tong)称、展望レポート)における「我が国(guo)の金(jin)融情勢」に関する評価で確認することができます。

 そこでは、金融緩和にあることの根拠(ju)として、

 ①イールドカーブの形状(zhuang)を評価(jia)すると、「日本(ben)国債のイールドカーブは、現行の金(jin)融市場調節方針(短期政策金(jin)利:-0.1%、10年物国債金(jin)利:ゼロ%程(cheng)度)と整合的な形状(zhuang)となっている」こと

 ②貸出金利(li)とCP・社債発行利(li)回りの水(shui)(shui)準を評(ping)価(jia)すると「企業の資(zi)金調(diao)達コストは、きわめて低い水(shui)(shui)準で推移している」こと

 ③日銀の短(duan)期経済観(guan)測調査(通(tong)称(cheng)、短(duan)観(guan))における金融機関の貸出態度DIの水準を評価(jia)すると、「全体として緩和(he)的(de)な水準を維持(chi)している」こと

 ④同じく短(duan)観における資金繰り判(pan)断(duan)DIの水(shui)準(zhun)を評価(jia)すると、「良好な水(shui)準(zhun)となっている」こと

 といった点が挙げられています。

 また、このことは明示的には記載されていませんが、

 ⑤自然利(li)子率に比(bi)べて、現在(zai)の実質金利(li)が低い水準にあること

 も、根拠になっているように思(si)います。

【「方向性」から見た金融政策】

 以(yi)上は、金(jin)融(rong)(rong)政(zheng)(zheng)策スタンスを金(jin)融(rong)(rong)政(zheng)(zheng)策の「水準」で見(jian)た場合の判断ですが、これに対して、金(jin)融(rong)(rong)政(zheng)(zheng)策のスタンスを「方向性(xing)」で見(jian)ると、別の評(ping)価ができます。

 第1に、イールドカーブを見(jian)ると、短(duan)期(qi)金利(li)(li)はマイナスにあるものの、10年物国(guo)債金利(li)(li)は、マイナス金利(li)(li)導入(ru)後は概(gai)してマイナスで推(tui)移していたものが、長短(duan)金利(li)(li)操作が導入(ru)されて以降、前(qian)述の通り徐々に上(shang)昇しており、現(xian)在(zai)では1.0%近(jin)くに達するなど、かなりのスティープ化を見(jian)せています(第3図)。

 第2に、こうした国債金利の動向を踏(ta)まえ、長期の銀行(xing)貸出金利は上昇(sheng)基調に転(zhuan)じています(第4図)。

 第3に、短観の金融機関の貸出態度(du)DIは、依然としてプラスの領(ling)域にはあるものの、徐々に低(di)下を示しており、「緩(huan)い」超幅(fu)が小(xiao)さくなっています(第5図(tu))。

 第(di)4に、短観の資金繰りDIも、製造業で低下をしてきており、「楽である」超幅が縮小してきています(第(di)6図)。

 第5に、実質金利(li)は、依然(ran)として自然(ran)利(li)子率(日経センター試算:-0.5%程度)を下回ってはいるものの、本年(nian)に入(ru)って上昇(sheng)に転(zhuan)じており、両者(zhe)の差は徐々に縮小してきています。

【もっと分かり易い金融政策へ】

 以(yi)上から、金(jin)(jin)融政策スタンスは、明らかに変(bian)化をしており、それを評価するとすれば、「金(jin)(jin)融緩和」というよりは、「金(jin)(jin)融緩和の縮小過(guo)程」にあるということではないでしょうか。

 このように言うと、「金融緩(huan)和が縮小傾向にあったとしても、金融緩(huan)和であることは間違いないのではないか」と反論されるかもしれません。しかし、このような時には、「水準(zhun)」よりは「方向性」から見た評価(jia)が大事であるように思います。「水準(zhun)」で考えると、「金融緩(huan)和」の後は、「金融中(zhong)立(li)」を経て、「金融引締め」になります。つまり、非連続(xu)(xu)(xu)的(de)なステージの連続(xu)(xu)(xu)となります。しかし、「方向性」で考えれば、連続(xu)(xu)(xu)的(de)に考えることができ、いずれ来る「金融引締め」を予想し、それに対する準(zhun)備をすることができます。

 こうした状況は、バブル崩壊直(zhi)後(hou)の1990年代(dai)初頭に景気(qi)(qi)を「水準」で判断(duan)するか、「方向(xiang)(xiang)性」で判断(duan)するか、で論争があったことを想(xiang)起させます。バブル崩壊直(zhi)後(hou)は、「水準」で評価(jia)すれば経済活動水準がまだ高かったので、景気(qi)(qi)対策(ce)は必(bi)要ないように見(jian)えました。しかし、景気(qi)(qi)の山を越えているということは、「方向(xiang)(xiang)性」から見(jian)れば景気(qi)(qi)は「後(hou)退局面」にあることを意(yi)味し、景気(qi)(qi)がいずれ悪化することを示しています。このような時(shi)には景気(qi)(qi)対策(ce)を準備(bei)することが必(bi)要になります。結果(guo)的に、この時(shi)期には景気(qi)(qi)対策(ce)が必(bi)要だったわけで、この経験は「方向(xiang)(xiang)性」で考(kao)えることの重要性を示しています。

 現在の政策が「金(jin)融(rong)緩和の縮小(xiao)(xiao)過程(cheng)」であることを明確(que)にしないと、「ステルス・テーパリング」(隠(yin)れた量的緩和縮小(xiao)(xiao))と批(pi)判されることにもなります。市場や社会全体とのコミュニケーションが大事な中央銀(yin)行としては、金(jin)融(rong)政策をもっと分かり易いものにすべきではないでしょうか。